「左遷(させん)」 の由来

「今日お伺いしても宜しいでしょうか。」
信頼してやまないAさんからか細い声で連絡があった。
「構いませんが・・用件は?」
いつも元気なAさん。
電話越しのただならぬ雰囲気に心配が募り、なんだか返ってそっけなく返してしまった自分がいやだった。
「用件は直接会ってから・・」
わかりました。・・と時間だけ決めて電話は切れた。
これはかなり気になる。気にかかる。
正義感は人一倍強いが時に脱線しすぎるAさん。
仕事には関係するものの、いつも休日出勤はお金と出世に繋がらないことばかりしているAさん。
いい年だけど独り身のAさん。
んん・・独り身・・もしや・・

さ せ ん  左遷!?

これは大変だ。兎にも角にも待ち時間が長い。
どうしよう。どんな顔して合おう。
なんて慰めたらいいのだろう・・
予定の時間の少し前にAさんは現れた。

ス ス スーツ!

いつも休日のお父さんみたいな格好のAさんがスーツを着て、しかも手には紙袋。これはお別れの挨拶だろうか・・
「じ じ 実は・・」
「まぁ 待って。とりあえずお茶 お茶。」
お茶をいれながら様子を伺うと、Aさんは柄にもなく緊張した面持ち。ネクタイがちょっと曲がっているけど。
お茶を出したところでこちらも踏ん切りがついた。
いつまでも逃げてはいられない。現実を受け止めよう。
いや受け止めてあげようではないか。
決心が固まってAさんの目を見るとそんな私の気持ちを悟ったのか、やや落ち着いた面持ちで口を開いた。

「実はこの度・・結婚することになりまして・・」

ええええええッ!?
「な~んだ。ああぁ これは失礼。」
なんだなんてことはない。逆にめでたすぎる。。
予想もしていなかった。いやどちらかといえば変な妄想ばかりしすぎていた。
まさかそうくるとは・・
一部始終を話すといつもの二人の関係にに戻りつつ、お互い大爆笑だった。
電話よりは直接伝えたかったからと案内状と菓子折りを受け取った。
なんであんなに電話でオドオドしていたのかと聞いたら年も年だから笑われるかと思っただって。
いやそんなことはない。これ以上にめでたいことは無い。
これでそうそうは「左遷」もないことだろう。

■左遷の由来

左遷の行き先としてAさんの会社だとインドネシアかバンコク、そして札幌か福岡の日本。
方向はそれぞれだったりする。
それなのに・・(Aさんの会社に限らず)行き先が左なのだろうかという疑問。
左遷とは、今までよりも低い地位や官職、職場に移されることをいう。
ということは右なら偉いというのだろうか?
この「左遷」という言葉は漢語からなのだそう。
中国では「左」を卑しみ、「右」を尊ぶという観念があるそうで官位の降格のことを「左遷」と呼んだのだそう。
インドとかでもご飯は右で食べて左は不浄の手だからお尻を拭くとか聞いたことがありますが同じなんでしょうかね。
この用法が日本にも伝わったと考えられますが、平安時代の律令下においては、全く反対でありました。
同じ大臣であっても、左大臣の方が右大臣よりも上だったのです。
そうかと思えば「右にでるものはいない」という風に右を上位とする考えもありました。
時代によって、左が右より上位であったり、その逆の場合の時もあったようですが、右が左より上位であった時代に登場した「左遷」という言葉は、そのまま今日まで生き残ったようです。

私の個人的な見解を述べさせていただけば、私は左ききなので「左遷」よりは「右遷」でいい気がします。
右が本位だから言われるんですよ。「ぎっちょ」ってね。
「ぶきっちょ」って言われているみたいで不愉快なんですよね。
ただ皆さんの「右」が私には「左」ただそれだけのことですからね。




著者: tossie
居住地域:北関東 年齢:70年代生まれ 趣味:釣り、散策 言葉の由来を調べています。言語学者とか研究家ではありません。 ただの一般人です。記事は仕事の合間に書いてます。 プロフィール詳細 Twitterでフォロー

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