「案山子(かかし)」 の由来

Photo By かかし物語〜別離 | Daisuke Matsumura!

「案山子(かかし)」 の由来

田舎の原風景に欠かせないアイテムを御存知ですか?
自然以外に人間が作り上げたもので風景の邪魔にならない不思議なもの。
それはかかし(案山子)です。

蓑笠(みのかさ)をつけて田や畑などの中に設置して鳥などの害獣を追い払うための人形や、同じことを目的とするなんらかの仕掛けのことです。
「人間がいる」 ように見せかけることでその役割を果たします。
人間が農作業などをおこなっているときには、鳥獣は近づかないからです。
地域によっては吊り人形にしたり、弓矢を持たせるものもありカカシのほか、トボシ・オドシ・ソメ・ヤマビトなどと地方によって呼び方が異なるそうです。
これは知りませんでした。
最近は巨大な目玉を模した風船なども用いられるようですが、これは「大きな目を恐れる」という動物の本能を利用したもののようです。

しかし、手を抜けばそれだけ効果も減るわけで、特にカラス等とは知恵比べです。
田畑を狙う側も当然ながら学習能力があり、動かない案山子は時間の経過と共に無害なものと認識されてしまいます。
そのため最近では、風やその他の動力によって不規則な動作をするものを導入したり、田畑の上に糸を張り巡らせて、そこに風車の類を通したり銀色のテープを多数吊り下げることで、きらきらと光り鳥獣を威嚇する効果を出すものなどがあるそうです。
よくぶら下がっているCDなどもこういった防衛策の一番安上がりな例といえましょう。
とはいえ、最終的には動く人間に優るものはないので一見、馬鹿にしがちな「かかし」さんも改良次第では一番の効果を発揮するのではないかというのが私の行き着いた持論です。
だって私も・・たまに騙されるので。

「案山子 かかし」 の由来

漢字の「案山子」はただの当て字なのか、しかしどれも的を得ていないので不思議な漢字。
これは中国の僧侶が用いたものだそうで、「案山」は山の中でも平らなところを意味し、「子」は人や人形のことなのだそうです。
これが後々日本に入ってきたようです。
一方で「鹿驚」という表記もあるのだそうで、「カガシ」とも呼ばれることも。
またカカシではなく前出のようにソメ(あるいはシメ)という地方もあり、これは「占め」に連なる語ではないかと考えられております。

「かかし」 の直接の語源は「嗅がし」ではないかと言われているそうです。
「嗅がし」 つまり嗅覚により効果を発揮する方法のことであり、これが本来の案山子の形ではないかと考えられます。
髪の毛や魚の頭、獣肉など焼き、それを串に挟んで田畑に立てることで臭いにより追い払うのです。
獣などはやはり目よりも鼻で嗅ぎ分けますからね。
今こそ被害は主に鳥かもしれませんが私の実家などでは猪豚の被害が言われています。
米よりも田んぼのあぜ道でミミズ取りをしたり、泥浴びに来るのだそうです。
彼らにはどちらかといえば人形よりも火や臭いのほうが効果的だと聞いたことがあります。
それを考えると昔は臭いで撃退したというのには納得です。
その「嗅がし」が清音化し「かかし」となったのではないかということ。
この清音化「かかし」は近世以降の関東から始まったそうで、関西でも使われるようになっったのは江戸時代も後半になってから。

人形としての案山子は(簑笠を付けたり一本足にすることは、神の姿を具象化)
神の依り代(よりしろ)として呪術的な需要から形成されていったものではないかとも考えられるのだそうです。

中部地方では案山子を祀る習俗があるそうで、長野県下では10月10日をカカシアゲ・ソメの年取などと呼び、この日に案山子を田から家に迎えて餅・大根などを供え収穫祝を行うそうです。
人形のかかしさんは、もしかしたら神様を田んぼに呼んできて、豊作を祈ったり、嵐をよけたりといった願いをこめて「祀られている」のかもしれませんね。
どことなく顔に愛嬌があったり、その佇まいが先祖様の記憶を呼び起こす気がするのは、そういった役割の名残なのかとも考えながら今度見かけたらシミジミ観察してみることにする。




著者: tossie
居住地域:北関東 年齢:70年代生まれ 趣味:釣り、散策 言葉の由来を調べています。言語学者とか研究家ではありません。 ただの一般人です。記事は仕事の合間に書いてます。 プロフィール詳細 Twitterでフォロー

2コメント

  1. 愛 - 2022年10月4日, 8:47 PM Reply

    tossieさん、こんばんは。

    初めてこのサイトを訪れた一般人です(笑)。

    2年少し前から始めたTwitterのあるツイートに、「背後の案山子政治家の影響だろう」という旨の記述があり、案山子の意味を調べていた所です。

    “同じことを目的とするなんらかの仕掛けのこと”
    とあり、なるほどこれか。と思いました。多分。

    他にも、私が気になっていた言葉の由来が、沢山調べられているようなので、思い立ったらここを訪れて楽しませていただこう!としております。

    調べるの、面白いですよね。
    私も散策が好きなんです。

    では、以後密かに楽しみますので
    よろしくお願いします!

  2. 秋山白兎 - 2023年8月12日, 1:22 PM Reply

    カカシの画像のコピーをご許可ください。私は静岡市在住の俳句愛好者・秋山忠義ともうします。よろしくお願いいたします。

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