「iPS細胞」 の由来

とあるスポーツサークルに通っていたときのお話。
そこには田舎ながらそれなりのエリートが集まってきていました。
大卒は当たり前で、税理士に起業家に弁護士の卵、中小企業の社長の息子もいました。
ある夏の日、アメリカ帰りの新人が入ってきたのですが、爽やかで白い歯で人当たりもよいこの方は確か研究者みたいなことを言っていました。
言っていたというのは、実は三回ほど参加した後に「仕事の関係」で転勤が決まり嵐のように去っていったのです。
よほどの売れっ子らしく、土地土地でどこにでも馴染み存在感を残して後腐れなく去っていく。
なんて好青年なんだろうと年下ながらに尊敬の眼差しで見送ったのでした。
爽やか好青年は確かにこういったのです。

「ぼくはiPS細胞ってのをやっているんです。そう、今流行のあれです。」

■iPS細胞とは

もちろん聞いたことはあったし、細胞って言葉だけはさすがに理解するのは易しいから最近なんとなくその時のことを思い出したのでした。
いや、訂正します。時折思い出してはいたはずです。
新聞などでよく目にはしていました。ただ見出しだけでそれ以上は興味を持たなかっただけでした。
そんな薄っすら頭に残っていた思い出と、その言葉が突如・・・
一気にメジャー(国民誰もが聞いたことのある言葉)へ躍り出たのです。
ご存知、京都大学の山中教授の研究によるノーベル賞の件からです。

これを書いている今は、一昼夜明けたわけですが今だマスコミの熱はやみません。
なぜ○○時代の同級生とか、京都大学の先輩である辰巳琢郎さんなどがテレビに露出するのかはいまいち理解できないのですが当の山中先生のコメントも人柄も素晴らしいし、何かと屁理屈を述べる役割の私ですがそういったことは今回は多めにみようと思います。
とにかく賞の受賞は目出度いことだし、更に実用化されればたくさんの人々の生命に希望を与えるってことだからおそらく次の受賞者が出ると下火になるのだろうけど・・・
今回は珍しく世間と一緒に喜びたいと思っています。

■iPS細胞の由来

にしても、ここ数年で発見されたらしいiPS細胞。なぜ英語綴りなのか。
また、その三つのスペルが何を意味するかは非常に気になるところなので調べてみたいと考えたわけです。
私は研究などは気が短いから到底できないでしょうが、
こういった素晴らしい発見を、私を含めた下々のものに少しでも分かりやすく伝えることはできるかもしれないと考えての行動です。

iPS細胞の正式名称は、やはり英語であり、「induced pluripotent stem cell」と言うようです。
こちらの頭文字を組み合わせた名前がiPS細胞となります。
英語の弱い私でも「cell」だけは訳すことができますが、それでは「iPS細胞」の「細胞」の部分でしかないので何の役にも立たないようです。
「induced」とは「人工的に誘導した」という意味。
複数の遺伝子を人工的に導入して作製したことから。
「Pluripotent」のpluriは複数(plural)を表し、potentは能力があるという意味なので、「pluripotent」は多能性となります。
その意味するところは、「受精卵のように、体中のあらゆる細胞になれる能力を持つ」という生物学の用語です。
「stem」は「stem cell」で「幹細胞」を意味します。

幹細胞とは、細胞分裂を繰り返して、同じ細胞を増やせる能力(自己複製能)もことであり、複数の異なる細胞に分化(変化)できる能力(多分化能)を併せ持った細胞のことだそうです。
つまり、iPS細胞とは「人工的に誘導した多能性幹細胞」ということになります。
このような訳では確かに分かりづらいですね。
しかし、英語の意味一つ一つで考えるとiPS細胞をよく理解できていない我々でも説明できいたそれらしい役割を見事に説明していると感じます。
そのため英語のまま用いられているのかもしれません。

確かに日本語でも何でも簡略化される時代なのでそれほど変わりないかもしれません。
様々な細胞に変化できる能力を持つことから、「万能細胞」と呼ばれることもあるとか。
日本語で一番理解しやすいのはこの訳でしょうね。

とにかくすごいものが出来てしまったってことは十分わかりました。
実用化のめどが立たないとノーベル賞は貰えないってことなので来年再来年なんてことはないでしょうが、それこそ「近いうちに」我々に直接役立つ、還元される技術として広まっていくことでしょう。

でもひとつ気になること、それは倫理の問題です。
人間はどこまで踏み込んでいいものでしょう。
原子力の問題もそうなのですが、iPS細胞についても人間そのものの存在をおびやかす可能性を秘めている気がします。
再生というものは滅びの美学を打ち消してしまうものです。
すべてが人間の思い通りになってしまったら、更に人間には畏敬というものが自然に対しても地球に対しても他の生物に対しても失われていく気がします。
そのようなことを考慮すると、単純に喜べないような気もしますが今までの教授にない、山中教授のリーダーシップ、行動力、表現力を見る限りではきっと人類のためになる還元方法を模索してくれることと確信しております。


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著者: tossie
居住地域:北関東 年齢:70年代生まれ 趣味:釣り、散策 言葉の由来を調べています。言語学者とか研究家ではありません。 ただの一般人です。記事は仕事の合間に書いてます。 プロフィール詳細 Twitterでフォロー

1コメント

  1. チークッパ - 2019年6月12日, 11:27 PM Reply

    悪くなかったです。

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