「オフコース」 の由来
思い出の写真を曲にのせて紹介する。
結婚式で、運動会の写真で、卒業式の感動の場面で・・・
真っ先に思い浮かぶのはこの人の声と曲ではないでしょうか。
それは小田和正さん。
その透き通った声とは逆に、本人のお人柄はというと自他共に認める難しいところがあるらしいとは人に聞いた話なのですが、そんな彼が一大決心で挑んだ企画があるのを皆さんはご存知でしょうか?
それは「クリスマスの約束」(クリスマスのやくそく)という音楽番組。
2001年より毎年12月25日深夜にひっそり、こっそり、ちゃっかり放映されいるのです。
2001年10月、小田さんはSMAP、福山雅治さん、桑田佳祐さん(サザンオールスターズ)、松任谷由実さん、宇多田ヒカルさん、桜井和寿さん(Mr.Children)、そして長年「犬猿の仲」と言われた山下達郎さんの7組に出演依頼の手紙を書いたのです。
以下手紙の原文
前略
突然の勝手な手紙を出す無礼をお許しください。
TBSから、現在、ある音楽番組をやれないか、という打診がありました。そして考えました。自分の歌を歌えばファンの人は喜んでくれるだろうけれど、それは目指すものではなさそうだ。そして、さらに考えました。僕等のような音楽をやって来た者にとって、今、大切な事は何だろうと思ったのです。
それは同じ時代を生きてきて、音楽を創った人達を認め、愛し、尊敬することなのではないだろうかと。それをこの番組で表現できないかと。それなら引き受けてみようと。
これは、僕の主観でやろうとしている番組です。偏見を承知で、批難を覚悟の上で、無数にある名曲から一方的に7曲を選びました。時代を創ってきた素敵な音楽達を。それで、あなたの曲をその一曲に選ばせてもらいました。
随分と前置きが長くなりましたが、ここからが本題です。
この曲を一緒に演奏してもらえないだろうか?というお願いの手紙だったのです。これは、あいつがだめだったらこいつという企画ではないし、もし残念ながら、あなたの不参加が決まったら、自分ひとりで演奏するつもりで望んでいます。
アーティスト同士が直に触れ合うことで進んでいける場所がある。音楽としても、音楽という文化の確立としても。そう信じています。それが見ている人に伝わるように全力で尽します。たとえ出演を断られたとしても、あなたへの尊敬の気持ちは些かも変わりません。
秋も深まるばかり。風邪などひかぬよう、充実した活動を続けてください。
2001.10.5 小田和正
しかしアーティスト7組そのすべてから出演を辞退されます。
納得できないスタッフをよそに小田さんが説き伏せる形で単独ライブ形式の公開収録を行うのでした。
その後リクエストに応じて再放送されて人気を博し以後、毎年制作・放送されているのです。
番組のコンセプトは「アーティスト同士がお互いを認め、愛し、尊敬すること」。
その努力が実って2008年までは小田さん自身がメインで歌うことが多かった番組ですが、賛同者が増え近年ではゲストがメインで歌うことが多くなってきています。
2011年にはそれまで最高だった2009年を上回る史上最多24組計41人のゲストが出演。
大変な盛り上がりを見せているのです。
小田和正さんといえばオフコース。
現在は活動を休止中(89年に解散とも)。その名前の由来は、「道を外れる」という意味から「オフコース(OFF COURSE)」。
信じられないことですが、小田さん自身が本業の建設関係の道から音楽の道に進んだことからついた名前なのだそうです。
私の考えですが、「クリスマスの約束」は小田さんが自ら再び道を外れたようにみえます。
それは今までの自分のやり方や生き方を変えるという道の外れ方です。
「オフロード」であるため決して平坦な道ではないでしょう。
でも一筋縄ではいかない小田さんらしく、その道を楽しむように鼻歌混じりにノンビリ進むはずです。
見たことのない方は是非、クリスマスの小田さんからのプレゼントを心待ちにしてみてください。
以下出演を辞退した桜井和寿さんからの放映後の手紙
小田和正様
昨日「クリスマスの約束」を拝見しました。
音楽が、時代性や歌自体が持っているメッセージを越え、人と人との間にある隔たりをなくしていけるということを証明するような番組であった気がします。
伝え遅れましたが、小田さんが数多くある曲の中から、僕らの曲を選んでくれたことえを心の底から嬉しく思っています。
嬉しいあまり小田さんから頂いたお手紙は、曲をつくるときに使う電子ピアノの譜面台に飾ってあります。
にもかかわらず、わざわざ手紙まで書いてくださった小田さんに返事さえ書かなかった自分をものすごくはずかしく思いますし、今も後悔しております。
ここからは言い訳になりますが、今だから伝えられる出演依頼をお断わりした理由です。
まず、同じ時期に他局で僕らのドキュメンタリー番組を企画していたこと。
また小田さんに音頭をとらせる形にして、豪華キャスティングの音楽プログラムをつくろうとしているのではないか、というTBSに対しての不信感。
そしてチャリティーでないとすれば、どこに意味を見出していいのかわからなかったというのが、僕が出演依頼をお断わりした偽らざる気持ちです。
でも昨日の番組を拝見し、申し訳ないような思いと共に、これでよかったんだ、という気持ちになりました。
先に書きましたが、僕が「クリスマスの約束」で感じたことは、音楽が人と人との隔たりをなくしていけるのだ、ということです。
「クリスマスの約束」では、ご一緒することができませんでしたが、小田さんの音楽と、僕らの音楽は、もうつながっているのだと思っています。
つなげてくださったのは小田さんです。
心から感謝しています。ありがとうございました。
2001.12.26 Mr.Children 櫻井和寿
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