「癪に障る(しゃくにさわる)」 の由来
不思議なもので、怒りの尺度というのは人それぞれに異なる。
自分が絶対に許せないようなことでも、人によっては気にもしない。
なんだか理不尽を感じることもあるが、逆にその人が怒りを表す物事に、自分は全く興味がなかったり。
お互い様?どっちもどっち?
そう、そこにはきっと興味の度合いが関係しているのかもしれない。
■「癪に障る(しゃくにさわる)」の由来
怒りの第一歩に「癪(しゃく)に障る」という表現がある。
「癪に障る」とは、「腹が立つ」とか「気に障る」、または「癇(かん)に障る」といった意味。
癪に障るの「癪」とは、胸や腹のあたりに起こる痛み、いわゆる「さしこみ」のこと。
と書きながら「さしこみ」とは?と私も頭をひねる。
さしこみとは胸・腹などに起こる急激な痛みのことを言うそうで、胃潰瘍・や胆石症などの症状と考えられるらしい。
普段はまったく無症状であるが食べ過ぎた後や、ときになんらの誘因もなく発作的に強い腹痛を起こすこと。
かなりの激痛で苦悶状の顔貌で冷や汗をかき体を維持できずに前屈姿勢でうずくまったりときには苦痛のため七転八倒する。
しかし、「さしこみ」と表現した場合、その症状も重さも様々なので要は「腹痛」全般と考えればいいだろう。
確かに腹痛の原因を追究するというのも素人にはなかなか難しい。
だれでも原因不明の痛みの覚えはあるだろう。
「さしこみ」という呼び名はよく時代劇に出てくるように古い言い回し。
腹痛というのは精神的なプレッシャーからも起きる。
そういったことから腹が立った時のことを「癪に障る」と言うようになったと考えればご理解いただけるのではないだろうか。
「さわる」にも同源の二つの漢字「障る」と「触る」が存在するが「癪」は体の部位のように触れられるものではなく、「癪」という病気になることを表しているので、「触る」と書くのは間違いとなる。
「しゃく」についても「積」に「病垂れ」で「癪」と書くのは和製漢字なのだそう。
辛苦が積もって起こる病という意味から作られたというから筋金入りだ。
「癪」を「しゃく」と読むのは、「積」を呉音で「しゃく」と読むから。
実にうまくできている「癪に障る」の意味と漢字。
怒りを腹に貯めて自らを痛めつける美徳的な考えは、いかにも日本人らしいが。
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