「スズキ(鱸)」 の由来

日本のルアーフィッシングにおいてはスズキのことがシーバスと呼ばれれている。

「スズキ」は、スズキ目・スズキ亜目・スズキ科に属する魚。
海岸近くや河川に生息する大型の肉食魚。
肉食系だから食いも荒いってことで手ごたえを楽しみたい釣り人たちに好まれるってことだろう。

前回「アジ」釣りに行った話には実は続きがあって、9時で切り上げた後に場所を変えて更に朝まで夜釣りを楽しんだ。
私は友人に連れていってもらったわけだが
その友人が更に数人連れてきて、大人数が車二台に分乗して荒波に挑んだ。
場所は日本の最東の端。って友人は言うけど、考えてみればそれは根室のほうではないかい?
って彼の機嫌を損ねないようにこの場だけで強い口調で断言しておこう。

彼ら夜のハンター達は、もちろん小物(アジとかメバルとかコチ)も狙うけど隙あらば大物も狙っている。それがシーバスだ。
それぞれの仕掛けを携えて、間髪いれずに投げ続ける。
糸の乱れに聞き耳を立てるようにリールを耳に近づけて目を閉じて精神を集中させる。
あたりがあればその一瞬に合わせて竿を立てて魚をしとめにかかる。
その一瞬の駆け引きを楽しんでいる。

「やられた」「おしい」「もってかれた」

どの言葉にも悔しさが込められてはいるんだけど、それは生き物同士の食うか食われるかの闘いに似ていて相手がしたたかなら諦めきれる、自分の力が足りなければそれまでといった、爽やかさがある。
なんとも不思議な午前三時の空間で、私は自分の釣りも忘れて彼らの姿に見とれていた。

「またやれらた。なんだろ。さっきから食い方は一緒なんだけど・・・」

そんな会話に同調して二人の話が盛り上がっていた。
どうやら二人とも同じ手ごたえなんだけど、中々かからないらしい。
二人にしかわからない感触の会話を楽しむように交互に投げる。
すると・・そのうちの年配のおじさんにヒットした。
竿がしなるしなる。今にも折れそうだ。

「だめだ。あがらない。網網。」
もう一人が車に走る。
そうそう、そんな型が上がらないから車に置いてきてしまっていた。

「シーバスか?」
私も名前は聞いたことがある。
手ごたえがいいことで人気の魚だ。
上げてみると驚いた。
50センチは越えている。
私は目の前でその光景が見られてことだけで完全に満足していた。

「くそ~。マルタか。臭いんだよなぁ。誰か外して。」

どういうわけか歓迎されていないらしい。
そんな皆のリアクションと、その名前から私は「丸太」つまり役立たずとその場では察知した。
マルタとは、コイ目コイ科に分類される魚で、マルタウグイ(丸太石斑魚)と呼ばれる。
話を聞いてみると、その臭いからか食べることも好まれないためすぐにリリースされた。
小骨が多いのでよく煮るか甘露煮にするなど調理にも手間がかかるようだ。
その後も数回マルタはかかったけど、どれもあげるとすぐに放された。
手ごたえは楽しめたわけだけど、あんなのは数に入らないと皆が口を揃える。
ぜんぜんその領域が分からない自分にはそんな皆の姿が怖ろしく格好良く見えた。

■「スズキ」の由来

皆がシーバスと呼ぶ魚はいわゆる「スズキ」なわけ。
人間にもありがちな名前だから「シーバス」と呼ぶのかは未確認。
その感覚だと、鈴木さんをポールとかジョンと呼ぶのと同じ気がするがそれ以上話を進めると、かなりややこしくなりそうだからここまでにしておこう。
スズキはいわゆる出世魚で、成長とともに呼び名が変わるってことは皆さんはご存知だろうか。

課長 部長 専務 社長 社長室長 ・・・おふざけがすぎた。

その呼び名も地方によって異なり、統一的な定義はないとのこと。
関東では1年ものと2年もので全長20~30cm 程度までのものを「セイゴ」(?)
2,3年目以降の魚で全長40~60cm 程度までを「フッコ」、それ以上の大きさの4,5年もの以降程度の成熟魚を「スズキ」と呼ぶが、関西では「フッコ」の代わりに「ハネ」という呼称が使われていたり、東海地方では60cm程度までを一律に「セイゴ」、
それ以上を「マダカ」と呼ぶなどのように基準は様である。

「スズキ」の名の由来については諸説あるようで、

○口が凄まじく大きいことからきた、スサマジグチ説
○出世魚で出世に進むことからきたススミ説
○鱗がすすけた色であることからきたススケ説
○鱗がすすいだように白いことからきたススギ説
○すずしく清らかな身であることからきたススジ説

などなど・・・どれも微妙でその説の多さも異常。国民的人気の鈴木さん同様にありがちな名前だからその説も多いのだろうと適当にフォローしておきます。
やはりスズキよりはシーバスと呼ぶほうが断然格好良く人気も出る。
更にその立場によっても名前が変わるというから忙しすぎる。引っ張りだこだ。

ここで一つの疑問が湧き出てくる。
マルタもより食べやすく、感触も楽しめたなら名前も変化し洋名もついたのだろうか?
でも余計なお世話かもしれない。彼らは黙っていてもリリースされていく。
生きながらえるのだ。生命としては余生が与えられ喜びもある。
訳も分からず、開放されたことに喜ぶのであろう。無邪気に。
自分に人気がないのも知らずに。

この人生の選択は我々人間にも求められる気がする。
平社員で一生を終えるのか。肩書きがえらくなり最後に下の責任を取らされて会社を負われていくのか。
社会には求められる人間でありたいとは思うが、土日まではつまらない接待ゴルフには行きたいと思わないし、嫌いな上役のつまらない話を居酒屋で数時間も聞かされるのも苦痛だ。

でも同窓会などで、ぺーぺーの自分を紹介するほど惨めなことも無い。
そんな人間は最初から出席しないか。
でもそれって、スタイルがいいから海に泳ぎに行く根性は汚いけどモテル女に似ていて嫌だ。
んん?問題がだいぶ違ってきているな。でも呼び名をみてよ。
「マルタ」と「シーバス」なんだか「寸胴」と「くびれ」くらい男って魚の引きがちがくないか?


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著者: tossie
居住地域:北関東 年齢:70年代生まれ 趣味:釣り、散策 言葉の由来を調べています。言語学者とか研究家ではありません。 ただの一般人です。記事は仕事の合間に書いてます。 プロフィール詳細 Twitterでフォロー

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